センター長からのあいさつ

Medical
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がんは、わが国では2人に1人が罹患する国民病であるとともに、あらゆる疾患の中で最も患者さん、ご家族等に身体的・精神的苦痛をもたらす疾患のひとつです。私たちは、このがんに対し、診療科および職種横断的なチーム医療を実践し、患者さん・ご家族に寄り添う医療を心がけてきました。

当センターは、2007年4月に国の「がん対策基本法」の施行と同時期に設立されました。設立に先駆けて、2003年10月に、専門のスタッフと薬剤調整室を完備した外来化学療法部が新設され、高度化するがん薬物療法を外来で安全かつ効率的に実施できるようになりました。 当センターの特徴として、前述した診療科および職種横断的なチーム医療を実践する「臓器別がんユニット」があります。1997年にラジオサージェリー外来(現脳腫瘍・小児脳腫瘍ユニット)、2003年に前立腺がん高度診断治療ユニット(現前立腺がんユニット)が設置され、その後、当センターの設立とともに、多くのがん種または合併症や有害事象などに対するユニット制診療体制が整いました。2008年には、がんサポートチームも始動し、2010年6月の積貞棟(がんに関連する診療科が集約した病棟)の開設と同時に、外来がん診療と入院がん診療をシームレスに実践する効率的で質の高い集学的がん診療を提供しています。また、緩和ケアセンターおよび緩和医療科が開設され、より専門的な緩和ケアを提供できる体制が整いました。

一方、次世代の医療開発を担う研究病院として、2013年9月より「キャンサーバイオバンク」を開始し、がん治療を受ける患者さんから御提供される生体試料および診療情報を経時的に収集・保管をおこなっています。この取り組みは、がん以外の診療科にも広がり、現在はクリニカルバイオリソースセンターとして、院内のみならず学内外の研究開発にとっての重要なプラットフォームとして利活用されています。 2015年には、わが国で初めてがんゲノム医療を臨床実装し、国内の多くの医療機関の支援をしてきました。2019年にがんゲノム医療は保険適用になりましたが、様々な課題を抱えての運用であり、当センターはこの課題を解決するために政策面でも積極的に取り組み、情報を発信しています。

当院は、高度な医療を提供する総合病院でもあります。今や、がん治療が必要な患者さんの多くは、様々な合併症を持っていたり、治療中に様々な有害事象が発生することがあり、総合的な医療の提供が欠かせない時代になりました。当院では、関係診療科および部門との横の連携が日常的に円滑に行われており、安心して総合的な医療を受けられる体制が整備されています。

このような医療を提供するためには、患者さん・ご家族が安心して医療を受けられるように、患者さん・ご家族とわれわれ医療関係者が一緒になって治療方針などを決めることが重要です。患者さん中心の医療を目指して、われわれ職員一同がチームとして取り組んで参りますので、皆様のご理解、ご協力、そしてご助言を宜しくお願い申し上げます。

京都大学医学部附属病院がんセンター長
武藤 学

京都大学医学部附属病院がんセンター長 武藤 学