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がんセンター概要

概要

京大がんセンターは「外来がん診療部」「入院がん診療部」「がん診療支援部」「がん教育研修部」「がん医療開発部」「がんゲノム医療部」の6つの部門と、緩和ケアセンターから構成されています。各部門には複数の診療科・部門から多数の医療スタッフが参画し、有機的に連携することにより、横断的な集学的がん治療と臨床開発・教育研修が可能になっています。
「がん」の克服に向けて、エビデンスに基づく標準治療を実践するとともに、本学のトップレベルの基礎研究成果を速やかに臨床へ応用し社会に還元するために、総合病院としての質の高い診療体制を構築しています。

京大がんセンターには、大学病院がんセンターとして下記の大きな特徴があります。

1)外来診療においては、「各臓器別がんユニット」を通して、診療科の垣根を越えて情報を
共有し、客観的かつ迅速に治療方針が決定されます。
2)総合病院として、併存疾患やがん治療による副作用に対し綿密な対応をしています。
3)総合大学として、トップレベルの医学部の研究技術や他の学部と連携した新規医療技術の
開発をしています。
4)卒前・卒後の一貫教育を通じて、数多くのがん専門医やがん専門職を養成しています。
5)専門的緩和ケアを提供しています。
6)ゲノム医療を推進し、患者さん中心のPrecision Medicineを提供します。

沿革

21世紀はがん治療の加速度的な革新と急速な普及により始まりました。がん治療は世界レベルでの標準化が進み、治療の中心は入院から外来へとシフトし、入院治療ではより高度な医療技術を提供することが可能になりました。

京大病院がんセンターは、2007年4月「がん対策基本法」の施行と同じくして設立されました。設立に先駆けて、2000年1月にデイサージェリーユニットが開設され、乳がんや口腔がん・婦人科がんに関して、外来での日帰り手術が始まりました。2003年10月には、専門のスタッフと薬剤調整室を完備した外来化学療法部が新設され、高度化するがん薬物療法を外来にて安全かつ効率的に施行できるようになりました。

「各臓器別がんユニット」は、1997年にラジオサージェリー外来(現脳腫瘍・小児脳腫瘍ユニット)、2003年に前立腺がん高度診断治療ユニット(現前立腺がんユニット)が試行されました。その後、2007年4月の京大病院がんセンターと設立とともに、新たに頭頸部がん、乳がん、肺がん・中皮腫、食道がん、膵がん、血液腫瘍についてもユニット体制が整いました。2008年には、がんサポートチームも始動し、さらに、2010年6月の新病棟(積貞棟)の開設と同時に、積貞棟1階でより集約された「外来がん診療部」、また、2階では診療科の垣根を越えた入院診療を可能にした「入院がん診療部」がスタートし、効率的で質の高い集学的がん診療を提供しています。積貞棟での新体制のもと、胃がん・GIST、小児がん、大腸がん、原発不明がん・希少がん、骨転移の各ユニットが開始されました。2013年にはがん薬物治療科(現在:腫瘍内科)が新設され、がんセンターにおける抗がん薬治療が安全かつ適切に運用されるよう、基幹診療科の機能を担うようになりました。その後は家族性腫瘍外来、婦人科腫瘍ユニット、NETユニット、骨転移、メラノーマ、OncoNephlology、胆道がんユニットと多数の専門ユニットが構成され、診断・治療方針から医療開発に貢献しています。また緩和ケアセンターおよび緩和医療科が開設され、より専門的な緩和ケアを提供できる体制が整いました。
さらに、「がん医療開発部」では2013年9月より「キャンサーバイオバンク」を開始し、がん治療を受ける患者さんから提供される生体試料および診療情報を経時的に収集・保管をおこなっています。
2015年に「がんゲノム医療部」が設立され次世代シークエンスを用いた遺伝子パネルによるクリニカルシーケンス検査(OncoPrimeTM)を導入しました。2017年からは末梢血を用いたリキッドバイオプシーにも対応しています。これらのシークエンス検査結果から、個々の患者さんに適した「より効果的」かつ「より副作用がない」治療方針を提供しています。


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体制

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外来がん診療部

外来がん診療部は、積貞棟1階および外来棟1階で運営され、外来がん診療室・外来化学療法室・外来処置室から構成されています。外来がん診療室では、腫瘍ごとに、そのがんを専門とする複数の診療科の医師・各種医療スタッフが「各臓器別がんユニット」にて一同に会し、新規患者さんを中心として検討が必要な患者さんを対象に議論を行います。診療科の垣根を越えて情報を共有し、緊密に連携を図ることにより、客観的かつ迅速に治療方針を決定し、最善の医療を提供できるようにしています。

現在、前立腺がん、脳腫瘍・小児脳腫瘍、肺がん・中皮腫、食道がん、乳がん、膵臓がん、大腸がん、胃がん・GIST、頭頸部がん、小児がん、原発不明がん・希少がん、骨転移、NET、家族性腫瘍、婦人科腫瘍、血液腫瘍、胆道がん、がんクリニカルシーケンス、メラノーマ、OncoNephlologyの各ユニットが運営されています。

入院がん診療部

入院がん診療部は、積貞棟2階において総病床数36床(総室16床、個室20床)で運営されています。特記すべきことは、「“がん”に特化」かつ「診療科横断的な入院診療」を実践する「がん治療専門病棟(集学的がん治療病棟)」であることです。がん専門病棟である特性を生かし、入院から外来まで一貫して専門性の高いがん治療を提供しています。

また、がん治療にともなう有害事象による緊急対応も当該診療科と連携して行っています。
さらに、がんの臨床試験や治験を行う「治験実施病棟」として、質の高い医療を提供しています。

がん診療支援部

がん診療支援部は、外来ならびに入院がん診療部と協力し、がん患者が安心して医療を受けるための支援体制の整備を目標にしています。また、地域ネットワーク医療部と密接に連携し、患者さんが居住する地域においても質の高い診療が継続できるよう地域の連携機関との協力を進めており、在宅療養やホスピスへの転院などの退院支援、外来通院患者への早期からの療養支援を行っています。

がん教育研修部

がん教育研修部は、高度ながん治療を実践し、新しい医療の開発を担当できる医療人を育成することを目的として、大学と病院の有機的連携により設置されています。
医学部生の教育においては、4回生の臨床腫瘍学の講義を担当するとともに、5~6回生の臨床実習を受け入れ、基礎教育とその普及に努めています。大学院の取り組みとしては、文部科学省がんプロフェッショナル養成プラン「次代を担うがん研究者、医療人養成プラン」において各職種のがん専門職コースを設けています。特に、京都大学独自の大学院コースとして「がん腫瘍学コース」を設け、新規医療のシーズとなるがん基礎研究を推進しています。研修医・修練医については、大学病院の特徴を最大限に生かし、ベッドサイドからベンチまで幅広く、臨床腫瘍学に関連するアカデミックな研修を提供しています。また、がんチーム医療の実践教育のため、毎年20以上の外部施設から医師、薬剤師、看護師をチームとして受け入れ、チーム医療に関する研修を行っています。

がん医療開発部

がん医療開発部は、文部科学省「がん治療を最適化する革新的個別化医療の実現」の下、「臨床研究支援」「キャンサーバイオバンク」の2本柱で活動しています。

「臨床研究支援」としては、研究者主導臨床研究の質の向上と臨床研究を実施する医師の事務的負担軽減を目的として、2012年7月より専任の臨床研究専門職が臨床研究を支援しています。

「キャンサーバイオバンク」は、2013年9月より稼動を開始し、がん治療を受ける患者さんから提供される生体試料(組織の一部、血液や尿)および診療情報を経時的に収集・保管しています。保管された生体試料や診療情報を時系列で解析することで、個々の患者さんに適した「より効果的」かつ「より副作用がない」治療法の開発、更には創薬や予防、早期発見などの革新的個別化医療に役立つと考えられます。また、学内外の世界トップレベルの基礎研究成果をすこしでも早く患者さんのもとに届けられるように、品質管理されたヒト由来の生体試料の収集・保管・管理を行うクリニカルバイオリソースセンターを2018年4月より本格稼働しています。

緩和ケアセンター

京都府がん診療連携拠点病院として緩和ケアの拡充を目指し、2014年に緩和ケアセンターが開設されました。当院の緩和ケアとしての緩和医療科外来およびがんサポートチームでの活動のみならず、地域での緩和ケアに関する活動を有機的に統合することも目標としています。

がんゲノム医療部

京都大学医学部附属病院では、2015年4月よりCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendment)ラボで精度管理された次世代シークエンスを用いた遺伝子パネルによるクリニカルシーケンス検査(OncoPrimeTM)を導入しました。対象は原発不明がん・希少がん・標準治療に不応となった固形がん患者で、手術や生検のFFPE(ホルマリン固定パラフィン包埋標本)や新鮮凍結標本を用いて検査が行われます。

さらに、2017年11月から、手術や生検の標本が採取できない方に、末梢血を用いたリキッドバイオプシーにも対応しています。これらのシークエンス検査結果から腫瘍における詳細な遺伝子異常の情報が得られ、これらの結果を、エキスパートで構成されるがんクリニカルシーケンスユニットで議論し、個々の患者さんに適した「より効果的」かつ「より副作用がない」治療方針を提供しています。

当がんセンター外来がん診療部の特徴は、患者さんを中心とした診療科を越えた集学的アプローチを基本としています。「ユニット外来」では新規患者や問題症例に関して、がん専門の内科医・外科医・放射線医など複数の専門医が集まり、各科の垣根を越えて緊密な連携を保ちながら、客観的で迅速な診断・治療方針の決定を行っています。すなわち、「ユニット」は京大病院がんセンターでのキャンサーボードとしての役割を担っています。これらのユニットでの議論の結果を踏まえて、主治医から患者さんに治療方針が提示されることになります。